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名古屋高等裁判所 昭和41年(ネ)449号 判決 1967年2月20日

控訴人・附帯被控訴人(被告)

大和信商株式会社

右訴訟代理人

佐治良三

外三名

被控訴人・附帯控訴人(原告)

北村弘

右訴訟代理人

田中一男

外一名

主文

原判決中、控訴人(附帯被控訴人)大和信商株式会社敗訴の部分及び控訴人(附帯被控訴人)角田茂雄に関する部分を取り消す。

被控訴人(附帯控訴人)らの控訴人(附帯被控訴人)らに対する前項各請求を棄却する。

本件附帯控訴を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じ、被控訴人(附帯控訴人)らの負担とする。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下、単に控訴人という)らの各訴訟代理人は、それぞれ、主文第一、二項同旨の判決を求め、附帯控訴につき「附帯控訴棄却」の判決を求めた。

被控訴人(附帯控訴人、以下、単に被控訴人という)らの訴訟代理人は、控訴人らの控訴につき「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求め、附帯控訴として原判決主文第一、四項に仮執行の宣言を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、左記のほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

《以下、省略》

理由

本件土地が被控訴人らの共有に属するところ、控訴会社が本件土地のうち原判決添付図面に掲記の土地五六一・八五平方米(一六九・九六坪)上に本件建物を所有して右土地を占有し、控訴人角田が本件建物を占有していること、昭和二五年一〇月二八日、本件土地の当時の共有者たる被控訴人北村弘及び亡北村奈良吉が日新食品のため本件土地のうち本件建物敷地部分につき建物所有を目的とする地上権を設定したこと、同日、日新食品はその所有にかかる本件建物につき所有権保存登記をなしたうえ、名古屋産業株式会社のため抵当権を設定したこと及び、右抵当権実行の結果控訴会社は本件建物を競落し、昭和三三年三月一日その旨の所有権移転登記を了したことは当事者間に争なく、亡北村奈良吉は三六年一月一七日死亡し、本件土地に対する同人の共有持分を被控訴人北村弘を除くその余の被控訴人らが相続によつて承継取得したことは、被控訴人らにおいて明らかに争わないのでこれを自白したものと看做すべきである。

ところで、地上権者がその所有する地上建物につき抵当権を設定した場合には、右地上権も原則として建物抵当権の効力の及ぶ目的物に包含され、したがつて、右建物の競落人と地上権者の間においては、特段の事情なき限り右建物の所有権とともに土地の地上権も競落人に移転するものと解するのが相当であるところ、右の如き特段の事情を窺い得ない本件では、控訴会社は本件建物の競落により本件土地の地上権を日新食品から承継取得したものということができる。

しかるところ、控訴人らは、右地上権を以て被控訴人らに対抗し得る旨主張するから、以下、この点について案ずるに、建物保護法一条一項によれば、建物所有を目的とする地上権に基づきその土地上に登記した建物を有するときは、地上権はその登記がなくてもこれを以て第三者に対抗し得るところ、右の「第三者」は、当該土地所有権の譲渡による新取得者のみを指称するものではなくて、地上権が譲渡された場合における土地所有者――旧地上権者のため地上権を設定した者――をも包含するものと解すべきである。本件において、控訴会社は地上権者として本件土地上に登記した本件建物を有すること前認定のとおりである以上、該地上権を以て地上権設定者ないしはその包括承継人たる被控訴人らに対抗し得るものというべく、畢竟、控訴会社は本件土地のうち本件建物敷地部分の占有につき正権限を有するものといわねばならない(なお、本件土地のうち右敷地以外の部分を控訴人らが占有していることを肯認するに足る証拠はない)。次に、また、控訴人角田も、本件建物所有者たる控訴会社にして前叙の如き敷地の占有権限を有する以上、被控訴人らに対しては本件建物に居住してその敷地を占有する権限あるものということができる。しからば、被控訴人らの控訴人らに対する各請求はすべて失当たること明らかであるから、これを認容した原判決を取り消し、被控訴人らの請求及び本件附帯控訴は棄却すべきものである。

よつて、民訴法第三八六条、第三八四条、第九六条、第八九条、第九三条を各適用して、主文のとおり判決する。(県宏 越川純吉 可知鴻平)

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